自己啓発支援センター(R)
Self-Development Support Center



☆ライフプランから始める本気の自己啓発を支援します☆


所長 釼地邦秀
Kenchi, Kunihide



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自己啓発の進め方>第3章:ライフプラン...人生目的と人生目標を定める.

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【はじめに】

ここでは「ライフプランの作り方」について説明します。具体的には「人生目的の見つけ方」と「人生目標の見つけ方」について例をあげながら、考え方・手順・最終的な確認の方法などを説明します。「大変そう...」と思われる方もおられるかもしれませんが、このステージを飛ばしては「ライフプランから始める本気の自己啓発」にはなりません。

人生目的・人生目標を内容とするライフプランに基づいて自己啓発プランを構築するからこそ、「人生目的」→「人生目標」→「自己啓発目標」という整合性のとれたプロセスが完成し、自己啓発が人生における重要な役割を果たすようになるからです

もちろん、自己啓発は思いつきで取り組むことも可能でしょう。しかし、ライフプランに整合性を持たせることにより、自己啓発の意義がより鮮明になり、自己啓発への強い自己動機づけが可能になります。結果として、自己啓発のさまざまな阻害要因に対する根本的な対策にもなるのです。

さらに、ライフプランを持っているということは人生目的と人生目標がはっきりしているということですから、人生におけるさまざまな局面においてブレの少ない適切な意思決定が出来るようになります。一生をかけて達成すべき目標がはっきりしているのですから、それを達成しようという意欲が湧き、やる気とバイタリティを持ち続けることも出来るようになります。どうか億劫がらずに、人生の目的設定・人生の目標設定に取り組んで下さい☆ 


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拙著『ライフプランから始める本気の自己啓発』

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【目次】

1.ライフプランは自己啓発の原点 ▶[本文]へ

2.人生目的の候補を探索する ~人生目的の見つけ方~ ▶[本文]へ

3.人生目的を決定する(図表-6) ▶[本文]へ

4.人生目標の候補を探索する ~人生目標の見つけ方~ ▶[本文]へ

5.人生目標を決定する ▶[本文]へ

6.ライフプランの作成(図表-7) ▶[本文]へ




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1.ライフプランは自己啓発の原点

ご存じのように、ライフプラン(life plan)とは人生計画のことです。自己啓発支援センターが提案している自己啓発では、このライフプラン(人生目的+人生目標)に整合性を持たせながら自己啓発目標を設定していきます。[ライフプラン(人生目的→人生目標)]→[自己啓発目標]という展開になるわけです。人生目的を実現するために(あるいは少しでもそこに近づくために)人生目標を設定し、その人生目標を達成するための1つの手段として自己啓発目標を考えていくわけです。かくして、ライフプランは自己啓発の原点になり、出発点にもなるのです。

もう一度、ライフプランを持つことのメリットを確認しておきましょう。

(1)
ライフプラン(人生目的・人生目標)に整合性を持たせることにより自己啓発への強い自己動機づけが可能になります。

(2)
その結果、出来ないことの理由を探している自分を、前向きな自分に変えることが出来ます。たとえば、「時間が取れない、費用負担が出来ない」とは考えず、「なんとかして少しでも時間や費用を生み出せないものか」と考えるようになるでしょう。

(3)
さらに、ライフプランは自己啓発に役立つだけではありません。ライフプランを持っているということは人生目的と人生目標がはっきりしているということですから、人生におけるさまざまな局面において、ブレの無い適切な意思決定が出来るようになるのです。さらには、日々の生活においても、やる気とバイタリティを持ち続けることが出来るようになります 



次はライフプランの出発点である人生目的を決める際の前提について整理しておきます。


(a)ライフプランの主人公は自分自身

ライフプランの出発点である人生目的についてはいろいろな考え方があります。このあとで順次説明をし、さまざまな事例も紹介しますが、それらはすべて「自分自身で考えるためのヒント」です。それを忘れずに取り組んで下さるよう御願いします。かりにヒントをそのまま採用する場合でも自分自身の納得のもとで自分自身のものとして採用して下さい。そうしないと借り物のライフプランになってしまい、ライフプランを持つことのメリットは半減してしまいます。


(b)当初は完全なライフプランでなくても良い

当初から完全なライフプランを持つことが出来れば、それが理想です。ですから、まずはそこを目指して下さい。しかし、そうならないことの方が多いと思いますので、以下にその時の対応方法を紹介しておきます。

「漸進方式」:
このあとの説明や事例を参考にしながら最初のライフプラン(人生目的+人生目標)を創り、それを改訂していく方法です。改訂を繰り返しながら納得のいくライフプランの完成を目指すことになります。

「拠点方式」:
これは現時点のライフプランを足場にして考える方法です。たとえば、現時点で人生目的を持っているのなら、このあとの説明や事例を参考にしながら、その確認・修正をします。もし人生目標しか持っていない場合には、それを手がかりにして人生目的を探索・決定していくことが可能です。そのような場合には「なぜ」を繰り返しながら進めていくのです。つまり、「自分はなぜこの人生目標を大切にしているのだろう」とえてみることにより、人生目的に気づくことが可能になります。





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2.人生目的の候補を探索する ~人生目的の見つけ方~

さて、始めは人生目的の探索(つまり人生目的の見つけ方について)いくつかの方法を紹介します。それは「メメント・モリ」、「ロールモデル」、そして「自己分析」です。聞き慣れない言葉もあるかもしれませんがそんなに難しい説明にはなりませんので心配はご無用です。

人生目的の絞り込み(決定)はあとで行いますので、まずは広く情報を探索して下さい。人生目的そのものについての情報でも、人生目的を考えるための関連情報でも良いのです。また、似たような情報であっても気にすることはありません。そのまま収集しておきましょう。なぜならば、同じような情報に複数回注目したということは、それらがあなたにとって重要な情報である可能性が高いからです。

「人生目的」は必ず到達すべきものとして探索・決定する必要はありません。到達出来るにこしたことはありませんが一生到達出来なくても構わないのです。なぜならば、人生目的は人生を歩んで行く時の方向を示す役割、すなわち「人生の指針」という役割を持っているからです。

「人生目的」・「人生目標」・「自己啓発目標」の分類は厳密である必要はありません。探索時の自分の判断で仮分類しておいて下さい。このあとの手順にしたがって進めて下されば、何を人生目的とし、何を人生目標や自己啓発目標にするかは自ずと明らかになっていきます。最終的にはあなたの納得のいく分類になりますので心配はいりません。

人生目的の探索結果は「人生目的探索のメモ」として記録しておきます。ワープロを使える人はワープロを使って下さい。記録・修正・追加・入れ替えなどが簡単に出来るので後々便利です。




2-1.メメント・モリ

メメント・モリ(memento mori)」とはラテン語で「死を想え」という意味です(*1)。内容が重いので一番最後にもっていくことも検討したのですが、人生目的探索の前提として、どうしても最初に紹介しておきたいのです。出来る限り簡潔に説明しますので少しの間お付き合い下さい。

この言葉は、ペストが蔓延し、生が刹那的・享楽的になった中世末期のヨーロッパで盛んに使われたラテン語の宗教用語です。私は、これ(死を見つめること)が自己啓発の原点だと申し上げたいのです死を想うことによって、生を真剣に考えるようになるからですたとえば、日本IBM・常務取締役の経験を持つ井上富雄氏は新聞に掲載された有名人の死亡告知記事を切り取ってスクラップ・ブックをつくり、折に触れてそれに目を通し人生意識(精一杯生きようという意識)を呼び起こしたと記しています(*2)。土光敏夫氏は毎日、早朝と就寝の前に法華経を読誦(どくじゅ)していました(*3)。ネスレ日本社長兼CEOの高岡浩三氏は父親も祖父も42歳で亡くなったので自分も42歳で死ぬと覚悟を決め、人生を逆算して生きてきたと述べています(*4)。

私は「五薀皆空(ごうんかいくう)、桜花たるべし」と手帳に書き込んであります。「心身はすべて空なのだから、桜の花のように精一杯生きよう!」という意味で使っています。1日1回はそれを見ます。「五薀皆空」は代表的な仏教経典である般若心経の一節です。さらに、就寝の前には般若心経を読誦したあとに坐禅をします。そのうえで明日の予定を思い浮かべながら床に就くのです。そうすると気持ちの整理がつき明日への希望が湧いてきます。私は実在したゴータマ・シッダッタ(*5)という人間が説いた教え(仏教)を宗教哲学的な観点から捉え、人生を歩んでいくための拠り所としています。私の人生観や人生目的の根底を支えている大切な教えです。

このように、死あるいは空(くう)を思うことによってライフプラン(人生目的+人生目標)や自己啓発プランについて真剣に考えるようになります。自分自身のアンテナの感度も上がりますので、今まで気がつかなかったことにも気付くようになるのです。たとえば、行きつけの本屋の棚に、今まで気が付かなかった本を見出すようになります。そのような過程の中から自分の人生目的・人生目標・自己啓発目標を創り出せるのです。「自己啓発目標が見つからない」、「目標を絞れない」、「三日坊主で終わってしまう」といった悩みも自ずと解消し、「時間が足りない、お金が足りない」と言う代わりに、「時間を生み出し、お金を遣り繰りする」方法を考えるようになります。本気で自己啓発に取り組もうというのであれば「メメント・モリ(死を想え)」を避けては通れないと思います。



【注】

*1.
田辺元(昭和39年) 『メメント・モリ」 『田辺元全集』(第13巻) 筑摩書房 pp.163-175. および、藤原新也(2008) 『メメント・モリ』 三五館 序.

*2.
井上富雄(1994) 『人生設計・ライフワークの原理・原則』 総合法令 pp.51-52.

*3.
土光敏夫(2009) 『土光敏夫 信念の言葉』 PHP研究所 p.26.

*4.
高岡浩三(2013) 『逆算力』 日経BP社 「はじめに」より.

*5.
ゴータマ・シッダッタ(Gotama Siddhattha)とは古代インドの言語(パーリ語)による釈迦の姓名です(ゴータマが姓、シッダッタが名)。中村元(2007) 『中村元選集(決定版) 第11巻 ゴータマ・ブッダⅠ』 春秋社 p.85.




2-2.ロールモデルを探す

ロールモデル(role model: 役割モデル)とは自分の模範となる人のことです。自分が成りたいと思っている人が見つかれば、その人の生き方を参考にしてあなた自身の人生目的やそれに関連した情報を見つけ出すことが出来るでしょう。念のためにいくつかの留意点を申し上げておきます。

(a)ロールモデルとした人のすべてを受け入れる必要はありません。

ロールモデルについては、その人の全体をモデルとしても、一部分をモデルとしても、どちらでも構いません。「あの人の、こんなところを見倣いたい」ということでも良いのです。さらには、何人かのロールモデルの良いところを統合すると自分自身が理想とする人間像が浮かびあがってくるでしょう。それらの根底に自分の納得する人生目的を見いだせないかを探索・検討するのです。

(b)最終的には自分自身が納得した自分自身の人生目的にならなければいけません。

ロールモデルは自分自身の人生目的を発見するための(部分的な)お手本と考えるわけですから、最終的には自分自身の理想像を描き、そこから自分自身の人生目的を決めなければなりません。借り物であったり、単なる模倣であってはいけないのです。もし人生目的が本当に自分のものになっていなければ、それは「生きる情熱」も「苦難を乗り越える忍耐力」も「心底からの安らぎ」も与えてくれないでしょう。当然ですが、心の底から実現を願う「自己啓発目標」も設定出来ないと思います。


2-2-1.自分自身の人生を振り返って、出会った人々を思い浮かべてみる。

ロールモデルの探索対象はいろいろありますが、まずは自分が今までに出会った人々を思い浮かべてみましょう。両親・兄弟・姉妹・親戚、学校(小・中・高・短・大・院)時代の先生や友人、さらには、職場の後輩・同僚・上司・幹部、協力企業の人々、顧客、などなどです。ややもすると有名人にばかり注意がいきそうになりますが、身近な人々の中にもロールモデルに相応しい人が結構いるものです。そのことを忘れないようにして下さい。


2-2-2.有名人の中からロールモデルを見つける

私は大関・魁皇をロールモデルの一人にしています。魁皇は1972年生まれ、福岡県直方出身で1988年に友綱部屋に入門しました。怪我を乗り越えながら忍耐強く努力を重ね、2011年の名古屋場所で通算最多1,047勝・大関在位65場所・幕の内879勝(いずれも歴代1位)を達成して引退。横綱(ナンバーワン)になれなかったところもなんとなく好きです。

もう一人、松原泰道老師も尊敬しています。老師は100歳を越えて一人で寝起きが出来なくなっても車椅子に乗ったままで講演をしていました。講演のみならず間近での法話も聞いたことがありますが、「私は何でも似合うのです。車椅子もよく似合うでしょう?」と言ったりするのです。こぢんまりとした会場は暖かみのある笑いで満ち満ちてしまいます。仏教では笑顔で人に接することも布施の1つとされていますが、老師は法を説くだけではなく自ら実行する方でした。「生涯修行・臨終定年」をモットーとしていて、101歳を迎えた時のインタビューでは「遺書には、地獄へ行っても説法を続けると書くつもりです」と語っていました(日本経済新聞; 2009年,2月,12日)。残念ながら2009年に101歳で亡くなりました。私は大関・魁皇も松原泰道老師も「自分を人々のために活かそうと努力してきた方」だと思っています。

さて、皆さんのロールモデルはどんな有名人でしょうか? 時系列で思い出して見ると漏れを少なく出来るでしょう。小学時代からでも良いですし、中学時代からでも良いです。実際に出会った有名人、テレビで経歴を知った有名人、新聞記事の中で知った有名人、といった具合です。国内外の人物、歴史上の人物にも注目してみて下さい。「あんな人になりたいな...」と思った人物が浮かんだら一歩踏み込んで調べてみましょう。その過程で自分の人生目的や人生目標(あるいはそれらのヒント)を発見出来ることでしょう。


2-2-3.書籍の中からロールモデルを見つける

「有名人の中からロールモデルを見つける」と重複することがあるかもしれませんが「書籍」という媒体に着目してロールモデルを探索してみましょう。自分が関心を持った分野の本から始めて、出来るだけ幅広く探索して下さい。気になった人物についてはさらに詳しく調べてみましょう。実在の人物に拘る必要はありません。あなた自身の人生目的のヒントを得るのが目的なのですから、小説の中の登場人物でも良いのです。登場人物の全体ではなくて一部分だけを参考にすることでも構いません。また、人物が登場しない哲学書などの場合には、書いてある内容から自分自身で人物像を浮かび上がらせ、そこから人生目的のヒントを得ても良いのです。



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□□□ 【ミニヒント】 □□□

上記のコラムに関連があるので、ここで私の運命観・人生観そして人生目的も披露させて頂きます。私は運命観・人生観の根底に原田雪渓老師と同じ考え方を持っています。五木寛之氏の考え方ともほぼ一致します。その上で「為命為己」を人生の目的としています。為命為己(いみょういこ)は私の造語で、「命あるものの為に尽くすことが自分自身の為でもある」という意味です。ですので、「与件の下(もと)で、人類のために己の能力の限りを尽くす」と決心しています。自分には如何ともしがたい条件すなわち与件の下で、少しでも人様の役に立ちたい、そしてそのこと自体を自分自身の喜びとしたいのです。さらには、いわゆる生きものだけではなく森羅万象のすべてに命(機能・働き)があると理解していますので、人間や動物だけではなく山・川・草・木も大切にしたいと思っています。「自即他。他即自」、すべては一つなのですから。


2-2-4.インターネットで検索

インターネットでの検索も有効です。キーワード(KW)を変えたり組み替えたりしながら検索してみましょう。ただし、インターネットの情報は玉石混淆ですので取捨選択には十分注意して下さい。自分自身のライフプランを作成するためのロールモデル探しですので、少しでも疑問を抱いた情報は採用しない方が良いと思います。



2-3.自己分析をしてみる

「自己分析」とは自分自身を分析することによって「人生目的」や「人生目標」あるいはそれらの手掛かりを得ようとする方法です。ロールモデルの探索結果と類似の候補項目やヒントが出てくるかもしれませんが、それらは「重複するほど自分にとって関心の深い候補項目なのだ」と解釈して活用します。もちろん自分の判断で適宜(統合、修正、廃棄)処理して下さっても構いません。自己分析の方法は以下の4つです。



(a)単刀直入に「どんな一生を送りたいのか」、「自分の人生目的は何か」と自問してみる。

この方法はタイトルどおり、 「どんな一生を送りたいのか」、「自分の人生目的は何か」と自問してみる方法です。出来れば、一人静かに集中して考えて頂きたいと思います。さらには、何日かの間をおいて再考していただくことが出来ればなお理想的です。お勤めのある方であれば1週間ごとに同じ曜日を使って2~3回ほど試みて頂きたいと思います。必要に応じて、間を置きながら、さらに繰り返します。1回に長時間というのも悪くはありませんが、1回を数時間とし、何日か間を置いて数回繰り返すと毎回新たな気持ちで確認・検討することが出来ます。



(b)自分の「過去・現在・未来」を手掛かりにしてみる。

次は時系列に沿って考えてみましょう。自分自身の過去・現在・未来を手掛かりにしてみるのです。ここまでの探索結果と同一の(あるいは類似の)候補項目が出てきても構いません。同じような処に関心が向くということは、それがあなたにとって重要なことである可能性が高いからです。引き続き広く探索して下さい。

○自分の過去を思い出してみる。
自分の過去を振り返って、強い関心を持った出来事や、熱心に取り組んだこと、やり甲斐・生きがいを見出したことなどを思い出してみましょう。そして、人生目的や人生目標に結びつきそうな出来事を思い出したら、「なぜ関心を抱いたのか」、「なぜ熱心に取り組んだのか」、「なぜやり甲斐や生きがいを感じたのか」と掘り下げてみます。ただし、掘り下げる作業は1度の「なぜか?」では不十分なこともあります。そのような場合には何度か繰り返して自問してみて下さい。1度目の「なぜか?」で出てきた理由について、さらに「それはなぜか?」と掘り下げていくのです。掘り下げが出来なくなったら、そこに人生目的や人生目標、あるいは人生目的や人生目標のヒントを発見出来るでしょう。

○自分の現在を見つめてみる。
あなた自身の現在を見つめることによって、人生目的や人生目標のヒントが得られるかもしれません。たとえば、現在夢中になっていることはありませんか? または、休みの日を待って熱心に取り組んでいる楽しみはありませんか? ふと気が付くといつの間にか同じことを考えている、そんな強い関心事項はありませんか? これらの分析によって人生目的や人生目標を発見できるかもしれません。まとめる方法は「過去」の場合と同じです。もし該当する出来事があったなら「なぜ夢中になっているのか」、「なぜ強い関心をもっているのか」と掘り下げてみるのです。そうすると、その根っ子に「人生目的」あるいは「人生目標」のヒントを発見出来るでしょう。

○自分の将来に想いを馳せてみる。
まずは、「このままいったらどうなるか」と考えてみましょう。「このままいったら、5年後にはどうなっているか、10年後にはどうなっているか、30年後には、人生の最後には、、、」と想像してみるのです。「まずい!」という思いが起きた時には、ぜひ自分がなりたい将来像を描いてみて下さい。その結果、自分の望む将来像がイメージされたら、「何故なのか」を考えてみます。そうすると将来像の基になっている「人生目的」や「人生目標」、あるいはそれらのヒントを発見出来る可能性があります。たとえば、今の仕事の中で専門能力を高め、将来はその分野で専門家として独立したいというイメージが浮かんできたならば、「専門家としての社会貢献」という人生目的を発見出来るかもしれません。そうすれば、その専門分野の資格取得という自己啓発目標も浮かんできます。それらの思考過程をもとにして、「人生目的」→「人生目標」→「自己啓発目標」という組み立てに進んでいくことが可能になるのです。



(c)「就いてみたい職業・職種」を掲げ、その理由を掘り下げてみる。

たとえば、就いてみたい職業として税理士(事務所の経営)が浮かんできた時に、「なぜ、税理士の仕事をしたいのか」と掘り下げて自問すれば、「専門知識を活かして中小企業の支援をしたい」→「社会貢献をしたい」と、「人生目的」にまで遡ることが可能です。他方、社内で教育の仕事(職種)に就きたいと思った人は、「なぜ、社員教育の仕事をしたいのか」と掘り下げて自問すれば、「教育」という価値項目に気付き、「一生を教育に捧げたい」という「人生目的」を持つことが出来るかもしれません。そうすれば、会社員として定年まで教育の仕事に携わっていくための人生目標や自己啓発目標も浮かんで来ます。さらには、「社員研修の講師として独立したい」とか「大学の教員になりたい」といった展開になるかもしれません。このように、「就いてみたい職業・職種」を掲げ、それらを手掛かりにして人生目的や人生目標を発見することも可能なのです。



(d)自分の「価値観」を手掛かりにしてみる。

最後は自分の価値観を手掛かりにする方法です。『広辞苑』(第6版)によれば、価値観とは「何に価値を認めるかという考え方。善悪・嫌悪などの価値を判断する時、その根幹をなす物事の見方」と説明されています。ですから価値観はそのまま人生目的に置き換えられたり、人生目的を定める時の根幹的な判断基準となります。意識するしないの違いはあるでしょうが、人は人生において重要視する価値観を基にして人生目的を決めるということです。とすれば、あなたが人生において重要視する価値を探索し集約することによって人生目的やそのヒントを得られる可能性があります。たとえば「奉仕」に価値を見出す人は、その「奉仕」自体を人生目的とする可能性があります。また「親和」や「対人関係」に価値を見出す人は「良好な家族関係」を人生目的の1つにするかもしれません。このようにあなた自身の価値観を整理することによって、あなたの人生目的を発見出来る可能性が高まるのです。



2-4.人生目的の候補を総括する

以上のワークをとおして「人生目的」に関するメモがたまっていると思いますが、ここでそれらの総括しておきます。ここまでのワークを振り返りながら、つまり今までのメモを読み返しながら、「人生目的探索のメモ」にまとめておくのです。そのうえで、それら人生目的の候補項目を評価検討し「人生目的」を確定することになります。





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3.人生目的を決定する

人生目的の「絞り込み」ですから「意思決定」ということになりますので以下に復習しておきます。

□ 「意思決定のポイント-1」:意思決定にあたってはその目的を明確に定め、広く情報探索を行いながら候補となる実行案を創り、その中から最適のものを選択する。
□ 「意思決定のポイント-2」:天命の下(もと)で人事を尽くし、人事を尽くして天命を待つ。 
□ 「意思決定のポイント-3」:候補案を探索する時のポイント。
□ 「意思決定のポイント-3a」:(意思決定の目的を明確に定める)。
□ 「意思決定のポイント-3b」:(情報は広く探索する)。
□ 「意思決定のポイント-4」:最適案を選択する時のポイント。
□ 「意思決定のポイント-4a」:(意思決定は不確実性の中で行われることを了解しておく)。
□ 「意思決定のポイント-4b」:(何かを得ようとするならば、何かを諦めなければならないことも ある)。
□ 「意思決定のポイント-4c」:(必ずシミュレーションをしてみる)。
□ 「意思決定のポイント-4d」:(書きながら考える)。

ただし、人生目的については「意思決定のポイント」の一部に例外が生じます。それは「意思決定のポイント-5」と「意思決定のポイント-6」です。この2つのポイントは使用しません。

■ 「意思決定のポイント-5」:最適案を選択するための評価システムを構築する。
■ 「意思決定のポイント-5a」:(評価項目を決める)。
■ 「意思決定のポイント-5b」:(評価尺度を決める)。
■ 「意思決定のポイント-5c」:(評価表を創る)。

「人生目的」は生きていくための方向を示すものとして設定されることが多く、具体的な目標値を設定してその実現を目指すとは限らないので、評価項目の「実現可能性」は使用しません。「人生目的」自体が最終目的ですので、評価項目の「「貢献度」も使用出来ません。「実現可能性」と「貢献度」を参照出来ないので、この2項目を参考にする「取り組み意欲」の評価は不十分なものになってしまう可能性があります。よって、これも使用しません。また、評価項目を決めないので評価尺度も設定しません。評価項目、評価尺度を設定しないので評価表も創りません。

■ 「意思決定のポイント-6」:評価表を使って評価し、選択項目を確定する。

評価表を創らないので、この項目も使用しません。




3-1.人生目的を絞り込むためのチェックポイント

人生目的を絞り込むためには、「意思決定のポイント-1」~「意思決定のポイント-4」と、以下に述べる9項目のチェックポイントを使用します。ここまでに記入してきた「人生目的探索のメモ」を使います。自己啓発の原点ともなる一番大切な処ですので納得のいくまで検討して下さい



【1】自分の人生目的は自分の望むように決めれば良い

「意思決定とは、特定の目的を達成するために、候補とされた実行案の中から最適のものを選択することである」と定義してきました。そしてその選択は「意思決定の目的」を主要な判断基準にして複数の候補案の比較・検討により行われます。たとえば、「仕事に役立つ資格をとる」という上位の目的(あるいは目標)があって、さまざまな資格の比較検討が行われ、それらの中から「最も仕事に役立つ資格」が決定されるわけです。

しかしながら、「ライフプラン」における根本的な意思決定、つまり人生の目的を決めるにあたっては意志決定の目的(上位の目的)はありません。人生目的が最上位のものですから(他の意思決定の判断基準にはなっても)人生目的それ自体は上位の判断基準を持つことが出来ないのです。したがって、自分の人生目的は自分の望むように決めれば良い(そうするしか方法がない)ということになりますただし、「思いつきで決めれば良い」ということではありませんので誤解しないで下さい。自分の人生の指針を決めるのですから慎重に熟慮を重ねて決める必要があります。そのために用意したのがここで紹介している「9項目のチェックポイント」なのです。



【2】何かを得ようとするならば、何かを諦めなければならないこともある

必ず何かを諦めなければならないと言いたいのではありません。ただ、人が一生に費やせる時間やエネルギーに限界があるとすれば、心底から希求する人生目的に絞り込んだ方が集中した生き方が出来ると思うのです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺がありますが、私も同感であり、そのように実行もしてきました。人生目的を1つに絞り込み、人生目標を少なめに絞り込んで生きてきたことにより、非力な私にしては多くのことを成し遂げることが出来たように思います。念のために申し上げますが、人生目的・人生目標の数は(最終的には)各自が望むように決めれば良いのです。多くても少なくても、それはその人の自由です。



【3】人生目的にしようと判断した項目が見つかった場合、さらに上位の目的が浮かんでこなければ、それを人生目的としておく

この方法は「なぜそれを人生目的としたいのか?」と自問することによって確認する方法です。理由が思いつかなくなるまで理由を遡及します。 「なぜそれを望むのか」と自問して「なぜならば、.....」といった理由が浮かんでくるようであれば、その理由が、あるいはその理由の先に、人生目的があるはずです。「答えられない。ただひたすらそれを望んでいる」といった状態になるまで遡ることが必要です。



【4】人生目的が複数になった時には、共通の上位目的が考えられないか、あるいはそれらの間に上下関係(目的>目標>手段の関係)が成立しないかを確認する

共通の上位目的が無く、上下関係も無ければ(独立した)複数の人生目的があるということになります。複数の人生目的が見つかるのは珍しいことではありません。ただし、人生目的は人生を歩む時の灯台のようなものですから、その数は少なめの方が混乱しないと思います。経験値ですが多くても3項目位までが妥当だと思います。数が多い場合は人生目標と人生目的が混在している可能性があります。人生目標を人生目的としがちですので、(候補項目が複数ある時には)共通の上位目的が考えられないか、あるいは上下関係(目的・目標・手段の関係)が成立しないかを良く確認して下さい。前者の場合は共通の上位目的が本当の人生目的になり、その下に元の複数の項目が各々人生目標として位置づけられることになります。また、後者の場合には上位の項目が人生目的、下位の項目が人生目標(時には自己啓発目標)となるわけです。

なお、複数の人生目的となった場合にはウェイト(weight)付けをしておくと自分としての重要度の目安になります。たとえば、w5(最重要)・w4(かなり重要)・w3(重要)の3段階とか「◎」・「○」の2段階で評価しておきます。もちろん同じ重要度の人生目的の場合には同じウェイトになります。



【5】自分が抱えている特殊事情との照合をする

人生目的の候補は、大切な候補項目を見逃してはいけないので、できるだけ広く探索するように申し上げました。それゆえ現実的に採用出来ない候補項目が入っている可能性があります。それをここでチェックします。たとえば、独身で兄弟が無く要介護状態の母親と同居している、自分自身に身体上のハンディキャップがある、正社員になれず臨時採用の状態が何年も続いている等々です。このような現実を抱えている場合には、それを考慮に入れて人生目的を決めていかなければなりません。その方向は、現実と理想の統合です。すでに申しあげたように人生目的は必ずしも達成する必要はありません。自分が人生を歩んでいく時の指針(灯台の灯り)となれば良いのです。ですから、あれも不可能これも不可能と決めつけずに今の自分が抱きうる精一杯の人生目的(灯台の灯り)を見つけて欲しいと願っております。最善の道を選択出来ないからといって、すべてを諦める必要はありません



【6】自分の人生目的は他人の人生にどのような影響を与えるだろうか。他人の人生を損なうことにはならないだろうか

「人生目的は自分の望むように決めて良い、そうするしか方法がないのである」と申してきましたが、私は「他人の人生を損なうことがあってはならない」ということを条件の1つにしています。なぜならば(人生目的は自分の望むように決めて良いのですが)他人の人生を損なう人生目的を持った人は人生の最後に後悔すると思うからです。その時にはもう間に合わないのです。後悔の念を抱いたままこの世を去るしかありません。「人生目的は望むように決めて良い」のですから理屈の上では後悔の思いを抱いたまま死んでも良いのですが、私はそうあって欲しくないのでチェック項目として掲げた次第です。細分化すると次のようになるでしょう。

□ まずは家族や職場の人たちへの影響を考えてみましょう。
□ そのあとで、考慮する人たちの範囲を広げていきます。
□ 少し大袈裟ですが、地球規模で、あるいは人類の遠い子孫のことも考えてみて下さい。



【7】自分の人生目的は自分を含めた全生命にどのように役立つだろうか

前項は「他人の人生を損なわないように」ということでしたが、それを一歩進め「自分を含めた全生命に何らかの貢献が出来ないだろうか」というチェックです。出来ないことは出来ませんが、自分に出来る貢献をしないままにしておくと、あとで後悔するかもしれません。というよりも、自分を自分以外の生命にも役立てることは素晴らしいことだと思うのです。



【8】その目的で人生を生き抜いていけるか

その人生目的は一生持ち続けていけそうか。10年後、20年後、50年後、さらには最後の時まで抱いていくことが出来るか。生きる意欲の湧いてくる目的か、苦しみや困難に直面した時にも生きる支えとなる目的か。絞り込んできた人生目的について、その有効性をチェックします。ただし、その人生目的の達成率がどのくらいになるか、ということではありません。なぜならば、人生目的とはその達成率を意識するものではなくて、自分が生きていく方向や範囲を示すものとして意識すべき性質のものだからです。自分にとっての北極星になるか、自分の人生における灯台の灯りになるか、苦しみや困難に直面した時にも生きる支えとなるか、それを確認するのです。

どのような障害があっても、あなたがその人生目的を支えにして歩んでいけるかどうかをシミュレートします。自分の将来を想像しながら、最後の時までをシミュレートしてみましょう。なぜならば、事前に精一杯考えておかないと、万が一その人生目的が間違っていた時に後悔の念が強くなるからです。間違っていたと分かった時でも、「自分なりに精一杯考えた末の人生目的であった」と言えるならば、後悔の念は起きないか、起きても諦めがつくでしょう。また、それがやり直しの効く時期であれば、再起への原動力にもなると思います。なお、「シミュレート」について復習する場合には「意思決定のポイント-4c」を参照して下さい。



【9】この人生目的を目指して人生を歩み続けた場合、最期の時に納得して死ねるだろうか

これが最終のチェック項目です。いままでに掲げた項目と重なる部分があるかもしれませんが、人生目的はすべての原点ですので念を入れておきたいのです。

キーワードは「納得」という言葉です。「達成感」と「納得感」は違います。目的や目標を完全に達成出来なくても、納得して最後を迎えることは出来ます。もちろん達成感と納得感の両方を実現出来れば言うことはありませんが、大事なのは「達成感」よりも「納得感」だと思うのです。なぜならば「達成感」は目標の達成率とセットになっている概念であり、その達成率には自己努力以外の要因が絡んできます。自分がいくら努力をしても100%の達成率が保証されないことは我々がよく経験することです。他方、「納得感」は自分の工夫・努力とセットになっていると思うのです。そして工夫と努力は自分次第です。

どんな条件下でも、その条件下で自分としての最善の工夫と努力をすれば、必ず納得した人生を送れると思うのです。ですから、あなたが決めようとしている人生目的が、どんな条件下でも一生涯に亘ってあなたの最善の工夫と努力を引き出すものであるか否か、最後によく考えて頂きたいと思います


【付記】
以上9項目のチェックポイントは努力目標です。完全に実行することは現実的には無理かもしれません。だからこそ努力目標として保持していきたいのです。少しでもそこに近づく努力をしたい、ということです



3-2.人生目的の決定

それではここで「人生目的探索のメモ」の整理と最終確認をしておきます。このあとの人生目標や自己啓発目標の探索・決定に使う可能性があるので、人生目的だけではなく人生目標・自己啓発目標の候補項目や関連事項のすべてを確認します。

ところで、ここから「Aさん」という人物を登場させ、説明事例として紹介してまいります。この「Aさん」は私の知人をモデルにした人物像です。念のために申し上げますが、Aさん本人ではありませんので御承知おき下さい。

Aさんは9つのチェック項目について順次検討を重ね、その結果を図表-6 「人生目的探索のメモ(総括)」のようにまとめました。


図表-6 「人生目的探索のメモ(総括)」
(Aさんの事例)
Aさん(人生目的メモ).jpg





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4.人生目標の候補を探索する ~人生目標の見つけ方~


人生目的が決まったらその人生目的に整合性を持った人生目標を探索・決定しライフプランとして統合します。つまり、人生目標は人生目的を目指すための手段という位置づけになります。


4-1.人生目標の探索方法 
探索にあたっては、あなた自身の人生目的に沿って広く探索します。自己啓発目標に分類されそうなものでも構いません。あとで再分類すれば良いのです。人生目標を探索するためには以下のような方法があります。

(1)
「人生目的探索のメモ」の活用。人生目的はいろいろな方法で探索しましたが、その時に人生目標や自己啓発目標などの関連情報も記録しておきました。まずは、それらを活用します。とくに人生目標の候補としての記録があったら、それはそのまま候補に採用出来るでしょう。

(2)

決定した人生目的を念頭に置きながら自分自身で考えてみます。これが探索の中核となります。手順に従ってここまで進めてきた読者は人生目的が(仮)決定されているので、それとの整合性を考えると、この方法が一番望ましい探索方法になります。人生目的を実現するためには(人生目的に向かって歩んでいくためには)何が必要か、と自問してみましょう。なお、その過程で人生目的に整合性を持たない人生目標(候補項目)が浮かんできた場合には原則として別途に取り組んで下さい。人生目的→人生目標→自己啓発目標の全体系をできるだけ混乱させたくないのです。最終的な採否の判断は自分でなさって下さい。

(3)
「人生目的」に依拠せずに「人生目標」を探索・決定したい人は、拙著『人生目標を見つけて自分のやる気を高めよう』を参照して下さい。

yaruki_hyousi.jpg ▶[内容紹介のページ]へ





□□□ 【記入事例-Aさんの場合】 □□□

Aさんの人生目的は「社会貢献」と「幸せな家庭」でしたので、Aさんはこの2つを原点として広く「人生目標」を探索しました。

(a) 人生目的「社会貢献」に関して

社会貢献に関してAさんが考えていた人生目標項目は、「経理の分野での昇進・昇格」と「定年後の税理士事務所開設」でした。この2つは現在および将来の「仕事を通しての社会貢献」という位置づけです。ここでAさんは昇進・昇格の分野を「経理」に限定しないことにしました。昇進・昇格は会社の意向によっても大きく変わるので、分野を限定しない方が現実的だと考えたのです。その方が現在の会社の仕事を通した社会貢献のチャンスが広がることにもなります。他方、税理士事務所の開設も「定年後」と限定しないことにしました。場合によっては定年前の開設もあり得るからです。その結果、人生目標の候補は「課長・部長への昇進」と「経理分野での昇格」の2つにしました。ライン管理者としての昇進と専門職としての昇格を掲げたわけです。他方、定年後の税理士事務所開設は、たんに「税理士事務所の開設」としました。


(b) 人生目的「幸せな家庭」に関して

人生目的(幸せな家庭)→人生目標(家族の相互理解)→自己啓発目標(家族とのコミュニケーション能力の向上)についてはすでに仮決定したとおりで良いと思っています。Aさんは「幸せな家庭」を築いていくためには一定以上の収入や家族の健康そして相互理解などが必要だと思っています。しかし、収入は(このままいけば)大きな問題は無いと思っていますし、家族の健康というのも(大切ではありますが)自己啓発との整合性を取りにくいように感じています。ですので、人生目的「幸せな家庭」に対応した人生目標は「家族の相互理解」としました。お互いが十分に理解し合うことは幸せな家庭を築くための基本事項だと考えたのです。そして「家族とのコミュニケーション能力の向上」を自己啓発目標、「家族旅行」をその手段と(仮決定)しました。旅行は計画段階から家族で話し合って作っていくつもりです。出来れば宿泊を伴った旅行にしたいという気持ちもあります。旅行中はもちろん、帰ってきてからも旅行中の出来事を話題にしながら「家族とのコミュニケーション能力の向上」を図れそうに思っています。現在でも(自分としては)家族とのコミュニケーションは取れていると思うのですが、よりいっそうの向上、という気持ちです。家族旅行は自分の両親が実行していたものです。旅を重ねるごとに家族の相互理解が深まっていったのを覚えています。なお、すでに人生目標としている自分自身の「健康」と「感性の向上」については、現段階での変更・修正はありません。





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5.人生目標を決定する

次は「人生目標」の評価決定です。「評価表」を作成して、ここまでに探索した人生目標候補項目の評価決定をします。ただし、人生目標は人によって異なる部分も多く、その多様性のゆえに標準化した評価表を作成するのは困難です。たとえ作成しようとしても項目数が多くなりすぎて実用的ではありません。ですので「意思決定のポイント-5c」: (評価表を創る)、において採用した「実現可能性」、「貢献度」、そして「取り組み意欲」を使って評価していきます。必要に応じて「意思決定のポイント」を復習しておきましょう。

さて、対象とする人生目標は実現可能でなければ採用することは出来ません。それが「実現可能性」のチェックです。次は、それがどのくらい人生目的の達成に役立つものなのか、その「貢献度」をチェックします。実現可能な人生目標の中から、出来るだけ貢献度の高いものを選ぶためです。そして最後が「取り組み意欲」です。それぞれの評価対象項目について、自分自身の取り組み意欲を確認していきます。





5-1.人生目標決定の留意点

□□□ 【評価項目】 □□□

■「実現可能性」: 候補となった1つ1つの人生目標について、その実現可能性を評価します

自分の現有能力で実現可能かどうか、先々獲得可能な能力を考慮した場合にはどうか、充当可能な時間・費用を越えたものになっていないか、などを思い浮かべながら1つ1つの人生目標について「実現可能性」を評価していきます。政治・経済・社会の変化を予測したり、あなたが個人として抱えている特殊な事情(たとえば家族の介護など)があれば、それらの影響も考慮します。

シミュレーションを忘れないようにして下さい。すなわち、着手後の遂行過程を想像しながら、人生目標の実現阻害要因を意識的に探すのです。悪い方向に考えながらシミュレートすると言っても良いでしょう。また、予想される不都合がある場合には、その時の対策を事前に考えてみます。このシミュレーションが終わってから「実現可能性」の最終評価をして下さい。ややもすると促進要因を考えたい気持ちになりますが、あらかじめ冷静に阻害要因を探索し必要な措置を講じておくことは人生目標の実現に必須の作業になります。なお、「シミュレーション」について復習する場合には「意思決定のポイント-4c」を参照して下さい。

*評価尺度: 「◎」=大変高い, 「○」=高い, 「△」=低い, 「×」=大変低い, 「―」=評価保留




■「貢献度」: 「実現可能性」で「×」とならなかった人生目標について人生目的への貢献度を評価します

その人生目標自体に実現の可能性があって、なおかつ人生目的の実現に役立つものを選びたいということです。「その人生目標がもっとも望ましい状態で実現した時」を想定して評価します。複数の人生目的がある場合には、それら複数の人生目的に対する貢献度を総合して評価します。厳密には個々の人生目的に対しての貢献度を評価すべきですが複雑になるだけで実用的ではありません。

*評価尺度: 「◎」=大変高い, 「○」=高い, 「△」=低い, 「×」=大変低い, 「―」=評価保留




■「取り組み意欲」: 「実現可能性」と「貢献度」で[×]とならなかった人生目標について自分自身の取り組み意欲を評価します

評価するにあたっては「実現可能性」と「貢献度」の評価結果を参考にしても構いません(おそらく、無意識の内にそうすると思います)。「取り組み意欲」については評価項目としての独立性を厳格にはしないということです。

*評価尺度: 「◎」=大変高い, 「○」=高い, 「△」=低い, 「×」=大変低い, 「―」=評価保留


■「総合評価」: 「実現可能性」・「貢献度」・「取り組み意欲」を総合して判断します

詳しい説明は要らないと思います。「実現可能性」・「貢献度」・「取り組み意欲」を総合判断し、人生目標として「選択」するか「割愛」するかを決めます。

*総合評価尺度: 「選択」, 「割愛」, 「保留」


□□□ 【記入事例-Aさんの場合】 □□□


◎ 人生目標「課長・部長への昇進」  

実現可能性
昇進は自己努力だけでは如何ともしようがない部分があります。たとえば、異動をはじめとして降格やリストラといった上司・会社判断や運不運もあるからです。しかしながら、今までの自分の人事評価や昇進の慣例に照らしてみると「課長」は十分に実現の可能性があると判断しました。ただし「税理士試験合格」が念頭にあるので、昇進の目標期限は設定せず「日々の業務を誠実に遂行し成果を出していく」と割り切りました。「部長昇進」の可能性は五分五分と推定しています。なお、想定される問題としては業務多忙となり家族との時間が少なくなるかもしれません。時間の使い方に十分な工夫が必要になると思っています。「実現可能性:○」

■貢献度
昇進すると部下の数も多くなり職務権限も拡大するので、会社業務を通じた社会貢献度をよりいっそう高めることが出来ると思っています。いわゆる出世ですので「幸せな家庭」づくりにも貢献しそうです。「貢献度:○」

■取り組み意欲 
昇進意欲はあるのですが「何が何でも」というほどではありません。「なぜか?」と自問しても特段の理由は無く、性分としか言いようがないと感じています。「やるべきことをきちんとやっていくだけ。あとは天命に従う」といった心境です。「取り組み意欲:○」

■総合評価
人生目標として選択します。昇進の期限設定はしませんが、日々の職務は誠実に遂行し期待されている成果を出していくつもりです。決して手抜きをする気はありません。「総合評価:選択」



◎ 人生目標「経理分野での昇格」

■実現可能性
基本的な考え方は「課長・部長への昇進」と同じですが、この目標は経理分野における昇格を想定したものです。経理の仕事は性に合っているし、経理に関する専門的な勉強をするのも好きです。今までのように担当業務をしっかりこなし専門能力を高めていけば十分に実現可能であると思っています。ただし昇進と同様、目標期限は設定せず「日々の業務を誠実に遂行し成果を出していく」と割り切りました。想定される問題としては業務多忙となり家族との時間が少なくなるかもしれません。時間の使い方に十分な工夫が必要になると思っています。「実現可能性:◎」

■貢献度
人生目標「課長・部長への昇進」と同じような貢献度はあると思います。くわえて、税理士試験合格(税理士事務所の開設)にも副次効果がありそうです。「貢献度:○」

■取り組み意欲
人生目的「社会貢献」との関連もあり、専門職としての昇格には意欲を持っています。昇格自体に意欲を持っているというよりも、昇格によってよりいっそう自分の専門能力を高めることが出来ると考えているからです。大変高い意欲を持っています。「取り組み意欲:◎」

■総合評価
人生目標として選択します。昇格の期限設定はしませんが、日々の職務は誠実に遂行し期待されている成果を出していくつもりです。決して手抜きをする気はありません。「総合評価:選択」




◎ 人生目標「税理士事務所の開設」

■実現可能性
自分は経営学部だったので税理士試験の受験資格はあります。簿記・会計などの基礎事項も学習済みです。現在は経理を担当しており、このことも試験に役立ちます。ただし、税理士試験合格には5, 6年、あるいはもっとかかるかもしれないと考えています。そこが問題といえば問題ですが、税理士事務所の開設はかなり先のことなので十分に間に合います。というより、なんとしても税理士試験に合格し税理士事務所を開設したいという強い決意を持っているので実現可能性には不安を感じません。他方、税理士事務所の開設・運営についての不安はあります。税理士に対する将来の需要動向をはじめ、開設資金やクライアントの獲得方法などについての不安です。しかし、これらのことは税理士事務所の開設を断念させる障害ではなく、乗り越えることが出来るハードルと捉えることにしました。「実現可能性:○」

■貢献度
自分の希望・能力・性格から考えた、自分にとって最も望ましい目標であり、税務会計という専門的な分野で永続的な社会貢献が出来ると考えています。ずっと先のことですが税理士の資格に併せて中小企業診断士や社会保険労務士などの資格を取れば、なおいっそうの社会貢献が出来るとも考えています。したがって人生目的に対する貢献度は大変高いと判断します。ただし、「幸せな家庭」という人生目的に対して貢献するか否かということでは、なんとも言えません。大きな貢献は無いでしょうが、大きく阻害することも無いと思っています。「貢献度:◎」

■取り組み意欲
税務会計の分野は自分の性格に合っており税理士試験の受験勉強には積極的に取り組めると感じています。昇進・昇格に目標期限を設定しなかったのは、税理士事務所の開設を最重点の人生目標としたかったからです。集中的な取り組みが成功の必須条件だと思っています。遅くとも定年後5年以内には開設したいと考えていますが、可能な限りの早期実現を目指していくつもりです。まずは「税理士試験合格を自己啓発目標に設定して取り組んでいこう!」というのが今の心境です。「取り組み意欲:◎」

■総合評価
迷うことなく人生目標として選択します。「総合評価:選択」





5-2.人生目標の決定

Aさんは残りの候補項目についても同様の手順で評価を行い人生目標を決定しました(このあとの図表-7を参照して下さい)。




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6.ライフプランの作成

あなたも、ここまでのワークで「人生目的」と「人生目標」を定めることが出来たと思います。そこで、それらを統合して「ライフプラン」として完成させます。




6-1.ライフプラン作成のポイント

(1)
人生目的・人生目標の総項目数が少ない場合には図解や箇条書きでもかまいません。反対に、5W2H*を明確に表現したい時は計画表(スケジュール表)にすると良いでしょう。試行錯誤の中で自分に合ったフォームを作成して頂きたいと思います。

5W2Hとは「What(目的・目標)、When(時期・期間)、Why(理由)、Who(実施担当者)、Where(実施場所)、How(達成手段)、How much(費用予算)」です。

(2)
念のために、取り組み開始後の「変更と中断」についても考えておきましょう。たとえば、どのような状況になったら変更・中断するのか、変更・中断をした後はどうするのか、といったことです。それらのことについてあらかじめ考えておくと、取り組み後に状況が変わった場合、より適切に(継続・変更・中断の)意志決定が出来ます。



6-2.ライフプランの完成

Aさんは今までの検討内容に「重要度(weight: ウェイト)」と「達成期限」を追加してライフプランとしました。図表-7はその完成表です。以上の説明を参考にして、あなたも「私のライフプラン」を作成してみて下さい☆

図表-7 Aさんのライフプラン
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6-3.「私の決意表明」を書いてみよう

ライフプランが完成したら、ぜひ「私の決意表明」を書いてみましょう。他人に見せるものではありません。自分自身の動機づけのためです。シミュレーションの時と違って、今度は予想される阻害要因はなるべく書き込まないようにします。「きっと実現出来る!」と自己暗示をかけるように書きます。もし、阻害要因に触れなければならない場合には必ず対応策も付記し、その阻害要因を乗り越えられるようなストーリーにしておきます。すでにシミュレーションをしてありますので容易に出来るでしょう。この決意表明文を書くことによって、きっと取り組み意欲が高まります。ぜひ試してみて下さい。参考までにAさんの決意表明文を例示しておきます。自分で工夫したタイトル(あるいは副題)を付けても良いと思います。文末には作成年月日を入れて、サインをしておきましょう。縮小して手帳に貼り込んでおき毎日(朝晩)目を通したり、落ち込んだ時の活力剤として使うことも出来ます。

Aさんの決意表明文
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自己啓発の進め方:目次

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プロローグ 本題に入る前の概要説明

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ここでは「ライフプランから始める本気の自己啓発」について、その全体像を紹介します。【目次】1.自己啓発の必要性/2.自己啓発の阻害要因/3.阻害要因を克服する方法/4.自己啓発の統合モデル5. 自己啓発プランの完成。

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第1章 運命観 運命は変えられるか

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ここでは「運命観」について自分自身の考えを整理・確認して頂きたいと思います。なぜならば、ライフプランや自己啓発プランは、さまざまな意思決定の積み上げによって創られ、その意思決定は、その人の運命観の影響を受けるものだからです。たとえば、「運命は変えられない」と考えている人と、「運命は変えられる」と考えている人とでは意思決定の仕方は変わるでしょう。【目次】1. 自己啓発と運命観/2. 運命という言葉の意味/3. 運命と人間の自由意思との関係/4. 運命と工夫・努力との関係。

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第2章 意思決定  意思決定のポイントを掴む

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ここでは「意思決定のポイント」を整理します。なぜならばライフプランや自己啓発プランはさまざまな意思決定の積み上げによって創られるからです。第1章の運命観の説明に整合性を持たせながら展開し、最終的には「意思決定のポイント」としてチェックリストの形に総括します。【目次】1. 自己啓発と意思決定/2. 「意思決定の意味」から導き出される意思決定のポイント/3. 「運命観」から導き出される意思決定のポイント/4. 「各ステージ」に共通する意思決定のポイント5. 意思決定のポイント(一覧表)。

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第3章 ライフプラン 人生目的と人生目標を定める

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ここでは「人生目的と人生目標の設定」について、その考え方、具体的な手順、最終的な確認の方法などを説明します。【目次】1.ライフプランは自己啓発の原点/2.人生目的の候補を探索する/3.人生目的を決定する4.人生目標の候補を探索する/5.人生目標を決定する/6.ライフプランの作成。

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第4章 自己啓発プラン ライフプランに沿った自己啓発プランの設計

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ここでは「自己啓発プラン」の作り方について、その考え方と方法を説明します。【目次】1.ライフプランと自己啓発プランの関係/2.自己啓発目標の探索/3.自己啓発目標の評価決定/4.人生目的→人生目標→自己啓発目標の体系的確認5.自己啓発目標達成手段の決定6.ライフプランと自己啓発プランの統合7.実行計画の作成/8.実行計画表の作成。

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第5章 実行 自分で自分をやる気にさせる

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自己啓発目標を達成するには「自分で自分をやる気にさせる」ことが肝要です。ここではそのポイントを紹介します。【目次】1.メメント・モリ/2.計画は手抜きをせずに作成する/3.人生目的→人生目標→自己啓発目標→実行計画の関係を忘れない/4.「実行計画表」を自己動機づけに活用する/5.一日単位のP・D・S/6.振り返りを「習慣」にする7.自己啓発目標を目に付くようにしておく/8.ほんの少しで良いからやってみよう/9.出来たことに意識を向ける/10.目標を達成した時の自分をイメージしてみる。 

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第6章 振り返りとフィードバック 永続的な自己啓発を目指す

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最後は「振り返りとフィードバック」のステージです。1つの自己啓発目標への取り組みを終えたら(その達成度にかかわらず)振り返りをし、その結果を次の自己啓発に活かしていきましょう。それを繰り返すことによって、あなたの自己啓発能力を永続的に高めていくことが出来るのです。【目次】1.自己啓発目標の達成状況を判定する/2.振り返りとフィードバック。

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引用・参考資料/更新記録

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・ 釼地邦秀(2013) 『ライフプランから始める本気の自己啓発』 三恵社。
・その他。

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