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所長 釼地邦秀
Kenchi, Kunihide



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開設(2014年6月22日)

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▶[第21回目:文頭]


連載講座:組織活性化と管理者の役割>第5章 報酬

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【はじめに】

「プロローグ」の図表-2[組織活性化と管理者の役割(統合モデル)]に示したように、「報酬」は次の目標への動機づけに大きな影響を及ぼします。たとえば、業績に応じた、本人の満足する報酬を得ることが出来た場合、その人の次の目標設定・遂行レベルは高まるでしょう。反対に、本人の満足する報酬を得ることが出来なかった場合、次の目標設定・遂行レベルは低下するはずです。

このように、「報酬」は1つの目標遂行プロセスの完結点であると同時に、新たな目標遂行プロセスに影響を及ぼします。ですから、業務目標を達成した時には、本人の欲求を充足させるような報酬を与えなければいけないのです。この章では、「報酬」についての考え方を説明し、実践のヒントを提供します。



【キーワード】

管理者の役割/「報酬」を管理者の役割とした理論的根拠/従業員・部下の欲求の確認/業務目標と報酬の結びつけ/従業員・部下への支援/目標達成と報酬の獲得/「欲求充足の報酬化」を多様化する/経営幹部・管理者のための実践ヒント



【目次】

あらかじめ詳細項目を一覧したい方は 7.「報酬」の実践ヒント(一覧表)を御覧下さい)

1.「報酬」を管理者の役割とした理論的根拠(図表-1再掲) ▶[本文]へ

2.従業員・部下の欲求の確認(経営幹部・管理者のための実践ヒント-1) ▶[本文]へ

3.業務目標と報酬の結びつけ(経営幹部・管理者のための実践ヒント-2)(図表-21) ▶[本文]へ

4.従業員・部下への支援(経営幹部・管理者のための実践ヒント-3) ▶[本文]へ

5.目標達成と報酬の獲得 ▶[本文]へ

6.「欲求充足の報酬化」を多様化する(経営幹部・管理者のための実践ヒント-4) ▶[本文]へ

7.「報酬」の実践ヒント(一覧表) ▶[本文]へ



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1.「報酬」を管理者の役割とした理論的根拠

「報酬」を管理者の役割とした根拠は「ニューズトロム=デイビスの経路-目標モデル」にあります。すでに紹介・説明済みのモデルですが、いま一度掲げておきましょう。

図表-1 ニューズトロム=デイビスの経路-目標モデル(再掲)
図表:経路-目標.jpg



この図からも(再)確認出来るように、従業員(部下)を目標に向かって動機づけ、結果、その人の欲求充足と組織目標の達成を同時的に実現するプロセスの出発点は欲求の確認です(プロセス-1参照)。そして、そのプロセスの完結点には、個人の欲求充足つまり望んでいた報酬の獲得と組織目標の達成とが一緒になって示されています(プロセス-7参照)。かくして、「報酬」は個人の欲求充足と組織目標の達成とを統合する大変に重要な機能を果たしていることが分かります。以下においては、「ニューズトロム=デイビスの経路-目標モデル」に沿って、「報酬」に関する経営幹部・管理者*の役割を述べていきます。

*「報酬」については経営幹部の役割が大きな比重を占めるので「経営幹部・管理者」と表記する箇所があります。また、それに対応させるために「従業員・部下」と表記する箇所もあります。あらかじめ御了承下さい。




2.従業員・部下の欲求の確認

前項では「業務目標を達成した時には、本人の欲求を充足させるような報酬を与えなければいけない」と申し上げました。そうすると、経営幹部・管理者が最初にしなければならないことは従業員・部下の欲求を知ることです。それを表したのが経路―目標モデルの[プロセス-1]:「リーダーは従業員の欲求を確認する」というステージなのです。かくして、リーダーである経営幹部・管理者が「報酬」の役割を果たしていくためには、最初*に従業員・部下の欲求を確認しておくことが必要になります

*統合モデルのステージでは⑤[報酬]となっていますが、①[目標設定]のステージで、その準備をしておかなければならない、ということです。



【経営幹部・管理者のための実践ヒント】

ヒント1:[従業員・部下の欲求を確認する]
欲求の種類については第2章:「動機づけ」で既に紹介したとおりですが、以下にはその要点を復習しておきます。


<マズローの欲求リスト>

マズローは5つの基本的欲求を掲げていましたが、その内、現代の企業活動の中で採用可能な3つの欲求がありました。

・「所属と愛の欲求」
・「承認の欲求」
・「自己実現の欲求」


<三隅の欲求リスト>

三隅の調査結果からは4つの欲求を紹介しました。

・「職務内容と自己の能力や経験がよく合致していること」
・「自律性が高い(自分の仕事のやり方は自分で決められる)こと」
・「給料がよいこと」
・「仕事の継続性・安全性が十分に保証されていること」



<釼地の欲求リスト>

釼地の調査結果からは4つの欲求を紹介しました。

・「より多い給与・賞与」
・「職務上の達成感」
・「成果に対応した承認」
・「教育訓練の機会」



<その他>
その他にも、「従業員意識調査」、「自己申告制度」、「ヒヤリング」などによって従業員・部下の欲求を知ることが出来ます。



3.業務目標と報酬の結びつけ

さて、従業員・部下の欲求が確認できたとして、その次に経営幹部・管理者は何をしなければならないのでしょう。経路-目標モデルにおける[プロセス-2]は「適切なる業務目標が設定される」、[プロセス-3]は「リーダーは報酬を業務目標の達成に結び付ける」となっています。つまり、その従業員・部下の望んでいるものを業務目標の達成による報酬として与える仕組みを作る必要があるというのですなぜならば、単純に欲求を充足させるだけでは企業は成り立たないからです。かりに、「より高い給与が欲しい」という欲求を持っている従業員・部下がいた場合に、出勤しているということだけで「より高い給与」を払うわけにはいきません。また、「海外勤務をしたい」という欲求を持っている従業員・部下に対し、無条件で「ハイ、いいですよ」とは言えないでしょう。どちらの場合も「然るべき業績をあげたならば」という条件が付くことになると思います。

繰り返しになりますが、経営幹部・管理者は従業員・部下の欲求を知り、それを業務目標の達成によって獲得できる報酬に結び付けておかなければならないのです。したがって、統合モデルのステージ⑤[報酬]の準備は前もって①[目標設定]のステージでしておかなければならない、ということになります。以下においては、そのことを「欲求充足の報酬化」と表現していきます。図表-21で、しっかりと理解しておいて下さい。

図表-21 欲求充足の報酬化
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このように、第2章:「動機づけ」のところで紹介された、さまざまな「欲求」は「報酬化」の観点から管理活動に取り込まれていかなければならないのです。そうしないと「個人の欲求充足」と「組織への貢献」を統合することは出来ません。個人の欲求が充足されても組織への貢献が生じないようでは企業として成り立ちません。反対に、組織への貢献だけが求められ個人の欲求が充足されなければ従業員・部下はその企業・職場を去っていくでしょう。かくして、経営幹部・管理者が[報酬]の役割を果たしていくためには、(あらかじめ①[目標設定]のステージで従業員・部下の欲求を確認しておき)業務目標の達成と報酬を結びつけていくことが必要になるのです


【経営幹部・管理者のための実践ヒント】

ヒント2:[業務目標の達成と報酬の結びつけ]



☆☆☆ 【付記】 ☆☆☆

第2章「動機づけ」では、「個人の欲求充足」と「組織貢献」の両方を実現するにはどうしたら良いかということを説明しましたが、それらの方法の中には「報酬」として使えるもの、使えないもの、その中間のものがあります。ですので、理解を確実にするため、第2章:「動機づけ」で掲げた欲求項目から、「報酬化しやすい欲求」、「報酬化の難しい欲求」、「その中間の欲求」を採り上げ、「報酬化」の例として紹介しておきます。



(1)「より多い給与・賞与」(三隅の欲求リストおよび釼地の欲求リストより):
この欲求に対する、「欲求充足の報酬化」は容易です。すなわち、経営幹部としては「業績に応じた賃金制度の導入」・「(全社的)表彰制度の導入」*、管理者としては「公正な人事評価」がその例示となります。すなわち、業績をあげ組織に貢献すると、「業績に応じた賃金制度」・「(全社的)表彰制度」・「公正な人事評価」により、報酬として「より多い給与・賞与」を獲得出来ることになり、個人の欲求も充足されるのです。

*「表彰制度」については報奨金を念頭におきました。



(2)「所属と愛の欲求」(マズローの欲求リストより):
これは報酬化の難しい欲求です。欲求を充足させ、間接的・結果的に組織貢献に繋げる方法はあるのですが、”直接的”に業績に対応させること(報酬化)が難しいのです。すなわち、「全社的親睦行事の実施」・「小集団活動の活用」・「プロジェクトチームの活用」などは、この欲求を充足させ、間接的・結果的には組織貢献にも繋がるのですが、”直接的”に業績に対応させること(報酬化)が難しいのです

たとえば、業績に応じて全社的親睦行事の参加者を決めるというわけにはいかないでしょうし、どうように、業績に応じて小集団活動への参加を認めるというのも非現実的です。かろうじて、「プロジェクトチームの活用」についての報酬化が考えられますが(つまり、業績を揚げた者にのみプロジェクトへの参加を認めるようにするのですが)、これもあまり一般的ではありません。なぜならば、プロジェクトメンバーは今までの業績よりも、そのプロジェクトの課題遂行に貢献出来るか否か(その課題に対する能力と意欲)によって選ばれるのが一般的だからです。

*ただし、近い将来、従業員・部下にとって大変に魅力的なプロジェクトを立ち上げることが予定されている場合、そのメンバーの選考基準の一つに「業績」を加え、さらにその選考基準を事前に公表しておけば直接的な報酬化が可能になるかもしれません。



(3)「教育訓練機会の欲求」(釼地の欲求リストより):
これは工夫次第です。つまり、「報酬」として使えない場合と、使える場合があります。

たとえば、経営幹部が「教育体系の整備」や「OJT(職場内訓練)の導入」をした場合、これらは欲求の充足方法になり、結果として組織貢献にも繋がりますが、「報酬」としては使えないのです。なぜならば、(多くの場合)これらは従業員・部下の業績に対する報酬として参加が認められるのでは無く、業績に関係なく参加が認められるからです。管理者による「OJT」や「その都度教育訓練による部下指導」も同じことです。

他方、これらを報酬化することの出来る場合もあります。その良い例が海外研修です。勤務年数などの一定基礎条件に、「業績」を付加することで可能になります。つまり、「一定の基礎条件を満たしたうえで、しかるべき業績をあげたら、社費による海外研修を認める」とするわけです。

[第21回目:文末]■




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▶[第22回目:文頭]



4.従業員・部下への支援

以上のようなプロセスを経て業務目標と報酬の結びつけが完了すると、次には管理者(上司)の”支援”が浮上してきます。それが[プロセス-4]の「リーダーは従業員が業務目標を達成できるように支援する」と、[プロセス-5]の「従業員は満足感を得て動機づけられ、リーダーを受け入れる」です。「業務目標を達成できるように支援する」とは「報酬を得られるように支援する」という意味になります。

実務家の人達には「あたりまえ!」と言われそうですが、目標遂行には問題が付きものです。そこで、上司の支援が必要になってくるのです。部下の能力や意欲によっては”ほっておく”こともありますが、一般的には、問題は起きるし、部下は上司の助けを求めるし、上司は部下の問題解決の支援をするでしょう。それを示したのが[プロセス-4]と[プロセス-5]なのです。[第3章:部下育成]と[第4章:問題解決]を参照し、部下の業務遂行能力を高め、問題解決に支援を与え、部下が目標を達成して報酬を手にすることが出来るように支援して頂きたいと思います。かくして、経営幹部・管理者が[報酬]の役割を果たしていくためには、従業員・部下への支援が必要になるのです。


【経営幹部・管理者のための実践ヒント】

ヒント3:[従業員・部下への支援]


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5.目標達成と報酬の獲得

[プロセス-6]は「望ましい業務遂行結果が実現し、従業員は報酬を手にする」です。そして[プロセス-7]は「従業員の欲求充足と組織目標の達成が、より良く実現される」となっています。
 このことについては多くの説明は要らないでしょう。望ましい業務遂行結果が実現し、従業員・部下は報酬を手にし、従業員・部下の欲求充足と組織目標の達成が、より良く実現されるというわけです。今少し厳密に言うならば、業績に応じて報酬のレベルが決まり、受け取った報酬への満足度によって従業員・部下の欲求充足レベルが決まる、ということになります。(このプロセスについての実践ヒントはありません)。


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6.「欲求充足の報酬化」を多様化する

この章の最後には「欲求充足の報酬化」を多様化することの重要性に触れておきたいと思います。なぜならば、広い範囲から多様な人材を集め、しかも、その人達に意欲をもって働いてもらうには「欲求充足の報酬化」を多様化することが必須の条件になるからです。人はそれぞれに、それぞれの欲求を抱いていて、それを充足したいと思っています。その一つの場が企業(会社)です。したがって、その企業が多様な「欲求充足の報酬化」方式を持っているならば、多様な(欲求を持った)人材を惹きつけることが出来るわけです。さらに、欲求充足の方法を多様化できれば、報酬化のための選択肢も多様化するので個人の「欲求充足」と「組織貢献」の統合もいっそう容易になります。

かくして、経営幹部・管理者の方々には、(1)つねに従業員・部下の欲求を確認し、(2)それらの欲求が充足されると共に業績にも繋がる方法(つまり欲求充足の報酬化)を創出し多様化していくことが求められるのです。簡単なことではありませんが、少しずつ、一歩ずつでも、前に進んで下さいますように。

【経営幹部・管理者のための実践ヒント】

ヒント4:[欲求充足の報酬化を多様化する]


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7.「報酬」の実践ヒント(一覧表)

【経営幹部・管理者のための実践ヒント】

ヒント1:[従業員・部下の欲求を確認する]
ヒント2:[業務目標の達成と報酬の結びつけ]
ヒント3:「従業員・部下への支援」
ヒント4:[欲求充足の報酬化を多様化する]


[第22回目:文末]■





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連載講座>組織活性化と管理者の役割:目次


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プロローグ

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本題に入る前の準備です。内容は以下のとおりです。本講座の構成、管理者・組織・組織活性化の意味、6つの役割の抽出、6つの役割の体系化、統合モデルの提示、統合モデルの総括的説明、管理者の役割(自己評価チェックリスト)。

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第1章 目標設定

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「目標設定」の役割について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「目標設定」を管理者の役割とした理論的根拠、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、「目標設定」の実践ヒント(一覧表)。 

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第2章 動機づけ

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「動機づけ」の役割について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。動機づけのメカニズム、「動機づけ」を管理者の役割とした理論的根拠、マズローの欲求リストと実践ヒント、三隅の欲求リストと実践ヒント、釼地の欲求リストと実践ヒント、部下の欲求を知る方法、「動機づけ」の実践ヒント(一覧表)。

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第3章 部下育成

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「部下育成」の役割について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「部下育成」を管理者の役割とした理論的根拠、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、学習意欲の研究、「部下育成」の実践ヒント(一覧表)。

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第4章 問題解決

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「問題解決」について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「問題解決」を管理者の役割とした理論的根拠、「問題」とは、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、「問題解決」の実践ヒント(一覧表)。

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第5章 報酬

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「報酬」について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「報酬」を管理者の役割とした理論的根拠、従業員・部下の欲求の確認、業務目標と報酬の結びつけ、従業員・部下への支援、目標達成と報酬の獲得、「欲求充足の報酬化」を多様化する、「報酬」の実践ヒント(一覧表)。

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第6章 コミュニケーション

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「コミュニケーション」について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「コミュニケーション」を管理者の役割とした理論的根拠、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、「コミュニケーション」の実践ヒント(一覧表)。

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引用・参考資料/更新記録

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・釼地邦秀(2006) 『組織活性化と経営管理者の役割』 白桃書房。
・その他。

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