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所長 釼地邦秀
Kenchi, Kunihide



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開設(2014年6月22日)

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連載講座:組織活性化と管理者の役割>プロローグ

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【はじめに】

管理者の最重要の責務は、部下と共に自分の担当している組織たとえば「部」とか「課」といった組織の目標を達成することです。そのためには業務遂行意欲(やる気)と業務遂行能力(やる腕)を持った部下が、お互いに必要なコミュニケーションを交わしながら個人目標ひいては組織目標の達成に邁進出来るようにすること(つまり、組織を活性化すること)が大切になります。本講座では組織を活性化するために管理者が果たすべき6つの役割について実践と理論を融合させながら体系的に述べていきます。

具体的には「組織活性化のための管理者の役割」として、[目標設定]、[動機づけ]、[部下育成]、[問題解決]、[報酬]、[コミュニケーション]という6つの役割を掲げています。これらは、管理者が部下とコミュニケーションを交わしながら、組織目標や個人目標を設定し、動機づけと部下育成を行い、業務遂行時の諸問題の解決に支援を与え、最終的には業績に応じた報酬を与えるという一連のプロセスを念頭において抽出した役割です。あれもこれもと、いたずらに数多くの役割を掲げるのではなく、信頼に足る内外の研究成果と私のコンサルタント体験を判断基準にして必須の役割を厳選し、体系的なモデルにまとめました。のちほど[統合モデル]として紹介します。

さらに、この連載では理論の説明にも大いに意を注いでいます。「どうやるか(know how)」という実践的な方法を提示するだけではなく、「何故そうすると良いのか(know why)」を明らかにするためです。これにより、管理者の方々は実践のヒントのみならず、その根拠についても理解することが出来、納得感・安心感を持って実践に取り組んでいけるようになります。また、理論的な理解があれば自社・自職場固有の状況に合った、自分なりの実践方法を開発することも出来るようになるでしょう。そのための具体的な組織活性化の方法が数多く紹介されています。



【キーワード】

管理者/管理者の役割/組織/組織活性化の方法/目標設定/動機づけ/部下育成/問題解決/目標達成/報酬/コミュニケーション/統合モデル



【目次】

1.本講座の構成 ▶[本文]へ

2.管理者、組織、組織活性化の意味 ▶[本文]へ

3.6つの役割の抽出 ▶[本文]へ

4.6つの役割の体系化(図表-1) ▶[本文]へ

5.統合モデルの提示(図表-2) ▶[本文]へ

6.統合モデルの総括的説明 ▶[本文]へ

7.管理者の役割(自己評価チェックリスト) ▶[本文]へ




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1.本講座の構成

本講座では組織活性化めために管理者が果たすべき6つの役割を[統合モデル]に体系化して実践的・理論的に説明します。したがって、本講座で学習していけば組織活性化を実現していくための実践的なヒントを得ることが出来るだけではなく(理論的な拠り所を得ることも出来るので)納得ずくで実践に取り組んでいけるようになります。さらに、理論的な理解があれば自社・自職場固有の状況に合った、自分なりの実践方法を開発していくことも出来るようになるでしょう。



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2.管理者、組織、組織活性化の意味

まずは、キーワードの確認をしておきます。

はじめは「管理者」についてです。管理者は部課長クラスから第一線管理者までを含む概念として使っていきます。そのうえで、プロジェクト・マネジャー、グループ・リーダー、マネジャーといった肩書きの人々も、部下を持っている限り管理者と位置づけています。なお、本講座では単に「管理者」と表現することが多くなると思いますので御自分の職位に置き換えながら読み進んで下さい。

次は「組織」についてですが、”ある管理者が運営に責任を持っている単位組織”と定義します。すなわち、部長であれば「部の組織」、課長であれば「課の組織」を念頭に置いて頂ければ良いと思います。同様に、プロジェクト・リーダーの方は担当のプロジェクト・チームを、グループ・リーダーやマネジャーの方は担当のグループを組織と考えて下さい。なお、本講座では単に「組織」とか「組織目標」と表現することが多くなると思いますので御自分の所管している組織とその組織目標に置き換えながら読み進んで下さい。

キーワードの最後は「組織活性化」です。本講座では「業務遂行意欲(やる気)と業務遂行能力(やる腕)を持った管理者と部下が、お互いに必要なコミュニケーションを交わしながら個人目標ひいては組織目標の達成に邁進している状態をもって、その組織が活性化していると定義します」。そのうえで、組織活性化のための管理者の役割として、[目標設定]・[動機づけ]・[部下育成]・[問題解決]・[報酬]・[コミュニケーション]という6つの役割を掲げました。



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3.6つの役割の抽出

組織活性化のための管理者の6つの役割を抽出するにあたっては、実践的な側面と理論的な側面の両面から考察しました。まず、実践的な側面からの説明をしますが、そのキーワードは”組織目標の達成”です。管理者にとって自分が所管している組織の目標達成は第一義的な責務であり、おそらくこのことに異論を唱える人はいないでしょう。その観点から必須の役割として抽出したのが[目標設定]・[動機づけ]・[部下育成]・[問題解決]・[報酬]・[コミュニケーション]という6つの役割なのです。それは、必要なコミュニケーションを交わしながら、組織目標と個人目標を設定し、部下を動機づけ、育成し、業務遂行に際しての諸問題を解決し、目標を達成し、報酬を与えるという一連の目標遂行プロセスに沿って抽出した役割です。

次は示唆を得た理論についてですが、ニューズトロム(Newstrom, J. W.)=デイヴィス(Davis, K.)の研究が参考になりました。彼らは次のように述べています。「リーダーの役割は、適切なる業務目標を設定し、従業員が目標の達成によって望んでいる報酬を手にすることが出来るように支援することである」(要旨)。この研究報告からは、[目標設定]・[動機づけ]・[問題解決]・[報酬]といった管理者の役割を導き出すことが出来ました。

ただ残念なことに、彼らの研究からは[部下育成]に対応する役割を直接的には発見することが出来ませんでした。[部下育成]への示唆を与えてくれたのはローラー(Lawler,E.E.)などの研究者だったのです。彼等は[意欲]と[能力]は相乗的な関係にあり、かりに意欲が高くても能力がゼロであれば業績もゼロになるとの観点から、[業績=意欲×能力]という定義式を用い、業績を実現するためには意欲のみならず能力が必須のものであることを説いています。釼地邦秀(2001)、pp.46-51.そこで、[部下育成]も必須の役割の1つとして取り入れることにしました。なお、[コミュニケーション]については後ほど説明します。


【付記】
理論に依拠するにあたっては、その理論の妥当性が問われなければなりませんが、この連載の執筆にあたっては以下の判断基準によって採用する文献を決定しました。(1)その分野の専門家として名の通った研究者が書いた文献であること。(2)私自身の研究者・コンサルタントとしての知識・経験に照らして、その内容に重大な疑問や実践上の違和感を抱かせない文献であること。





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4.6つの役割の体系化

6つの役割の体系化についても、実践的な側面と理論的な側面の両方から”組織目標の達成”をキーワードとして検討を加えました。すでに述べたとおり、実践的には所管組織の目標達成を管理者の第一義的な責務と位置づけたうえで、必要なコミュニケーションを交わしながら組織目標・個人目標を設定し、部下を動機づけ、能力を開発し、業務遂行に際しての諸問題を解決し、目標を達成して報酬を与えるという一連の目標遂行プロセスを中核に据えて体系化を検討しました。他方、理論的にはニューズトロム=デイヴィスおよびローラーの研究を参考にしました。以下においては、理論的側面についてもう少し詳しい説明をしておきます。



4-1.ニューズトロム=デイビスの経路-目標モデル

図表-1はニューズトロム(Newstrom, J. W)=デイビス(Davis, K.)が掲げている[経路-目標モデル]ですが、組織目標の達成をリーダーの第一義的な責務とした上で、その役割をプロセス(過程)として示したものです。この経路-目標モデルは[6つの役割の体系化]にあたってとても有益なヒントになりました。



図表-1 ニューズトロム=デイビスの経路-目標モデル
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すなわち、彼らの示した7つのプロセスは、以下のような対応関係で[統合モデル]に取り込まれたのです。



[プロセス-1]
「リーダーは従業員の欲求を確認する」。リーダー(管理者)が従業員(部下)を動機づけるためには、目標を達成した時に、その部下が抱いている欲求に対応した報酬で報いることが必要です。「昇進したい」という欲求を持っている部下には昇進が、「収入を増やしたい」という欲求を持っている部下には給与・賞与の増額が有効な報酬になるということです。ですから、部下の動機づけのためには、あらかじめ部下が抱いている欲求を確認しておく必要があるのです。かくして、この[プロセス-1]は統合モデルにおける[目標設定]・[業績(目標達成)]→[報酬]→[動機づけ]という部分を構築する際のヒントになりました。 

【注】
彼らが使っている「リーダー」という用語は「管理者」と解釈します。同様に、「従業員」という用語は「部下」と解釈して下さい。



[プロセス-2]
「適切なる業務目標が設定される」。これは[目標設定]として取り込みました。

【注】
「業務目標」は部下の「個人目標」と解釈します。



[プロセス-3]
「リーダーは報酬を業務目標の達成に結びつける」。これは[目標設定]・[業績(目標達成)]→[報酬]→[動機づけ]のプロセスを構築する際のヒントになりました。



[プロセス-4]
「リーダーは従業員が業務目標を達成できるように支援する」。これは[問題解決]として取り込みました。



[プロセス-5]
「従業員は満足感を得て動機づけられ、リーダーを受け入れる」。このプロセスは統合モデルに直接的な対応関係を持っていませんがモデルを構築するにあたって包括的な示唆を得ました。



[プロセス-6]
「望ましい業務遂行結果が実現し、従業員は報酬を手にする」。これは[業績(目標達成)]→[報酬]→[動機づけ]のプロセスを構築する際のヒントになりました。



[プロセス-7]
「従業員の欲求充足と組織目標の達成が、より良く実現される」。この部分は統合モデルに直接的な対応関係を持っていませんが、モデルを構築するにあたって包括的な示唆を得ました。

【注】
「組織目標」という用語は管理者が所管する組織の目標と解釈します。たとえば、営業一課長の場合、営業一課の売り上げ目標がその一例になります。


4-2.ローラーの研究

先に紹介したニューズトロム=デイビスの研究は、6つの役割の体系化にあたって多くの示唆を与えてくれるものでしたが、彼らの示したプロセスからは、[部下育成]に対応する役割を直接的には発見することが出来ませんでした。[部下育成]への示唆を与えてくれたのはローラー等の研究だったのです。このことについてはすでに述べたとおりですので、ここでの再説明は省略します。




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5.統合モデルの提示

ここまでの説明により事前の準備は完了したので、図表-2に[統合モデル]を提示します。この[統合モデル]は、管理者が①部下と共に組織目標や個人目標を設定し、②部下を動機づけ、③部下育成を行い、④業務遂行時の諸問題の解決に支援を与え、⑤最終的には業績に応じた報酬を与えるという一連のプロセスを念頭において抽出した役割です。⑥コミュニケーション*は他の5つの役割全体に係わるものとして、それらを囲むような表現にしました。なお、[報酬]から[動機づけ]への点線は報酬に対する満足度がその後の動機づけに影響することを表しています。管理者の役割を単に羅列するのではなく、それら相互の関連に着目しながら体系的な統一を図ったので[統合モデル]と名付けた次第です。


*【コミュニケーションについて】
コミュニケーションについては依拠する研究を紹介しておりませんが、[ニューズトロム=デイビスの経路-目標モデル]では自明の前提となっています。たとえば、従業員の欲求を確認したり、従業員が業務目標を達成できるように支援する時など、あきらかにコミュニケーションの不可欠なプロセスが幾つもあります。

なお、第6章「コミュニケーション」のところではバーナードの理論を紹介する予定です。自ら経営者としての経験を持つバーナードは日本の経営学研究に大きな影響を与えた研究者ですが、組織の3要素として「共通の目的」、「協働意欲」、および、「コミュニケーション」を掲げ、コミュニケーションの重要性を説いています。Barnard(1938).




図表-2 組織活性化と管理者の役割(統合モデル)

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6.統合モデルの総括的説明

以上で統合モデル構築過程の説明はすべて終えましたので、ここではその全体を総括しておきます。まず、組織活性化のための管理者の役割ですが、[目標設定]・[動機づけ]・[部下育成]・[問題解決]・[報酬]・[コミュニケーション]という6つの役割を抽出しました。すなわち、管理者の第一義的な責務である所管組織の目標達成を念頭に置きながら、その実現に必須の役割を可能な限り絞り込んで抽出したのがこれらの役割でした。しかる後、それらを体系化したのが図表-2の[統合モデル]であり、以下のようなプロセスで構成されています。

管理者の第一義的な責務である所管組織の目標達成を実現するためには、まず所管組織と部下個人の①[目標設定]が必要であり、それらの目標を達成するためには②[動機づけ]と③[部下育成]が必須となります。そしてその上に④[問題解決]が追加されます。なぜならば、現実の目標遂行過程において問題が起きないことは皆無であり、この[問題解決]を組み込まなければ図表-2に示した統合モデルは絵に描いた餅に終わってしまうからです。かくして、[業績(目標達成)]の局面を迎えた部下は、その業績評価に応じた⑤[報酬]を手にし、その者が満足を得た程度に応じて次の動機づけレベルを上下させるのです。⑥[コミュニケーション]は、その他の5つの役割すべてに係わるので①[目標設定]~⑤[報酬]の全体を囲む表現にしました。




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7.管理者の役割(自己評価チェックリスト)

[統合モデル]を参考にして「管理者の役割(自己評価チェックリスト)」を創りました。活用いただければ幸いです。

*5段階自己評価:[5]=十分身についている/[4]=ほぼ身についている/[3]=必要最低限の水準/[2]=やや不足している/[1]=かなり不足している。

*記入例:□□□□能力[年月日:評価点]→[年月日:評価点]→[年月日:評価点]



・目標設定能力...... [               ]→[               ]→[               ]

・動機づけ能力...... [               ]→[               ]→[               ]

・部下育成能力...... [               ]→[               ]→[               ]

・問題解決能力...... [               ]→[               ]→[               ]

・報酬能力........ [               ]→[               ]→[               ]

・コミュニケーション能力  [               ]→[               ]→[               ]






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連載講座>組織活性化と管理者の役割:目次


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プロローグ

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本題に入る前の準備です。内容は以下のとおりです。本講座の構成、管理者・組織・組織活性化の意味、6つの役割の抽出、6つの役割の体系化、統合モデルの提示、統合モデルの総括的説明、管理者の役割(自己評価チェックリスト)。

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第1章 目標設定

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「目標設定」の役割について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「目標設定」を管理者の役割とした理論的根拠、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、「目標設定」の実践ヒント(一覧表)。 

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第2章 動機づけ

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「動機づけ」の役割について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。動機づけのメカニズム、「動機づけ」を管理者の役割とした理論的根拠、マズローの欲求リストと実践ヒント、三隅の欲求リストと実践ヒント、釼地の欲求リストと実践ヒント、部下の欲求を知る方法、「動機づけ」の実践ヒント(一覧表)。

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第3章 部下育成

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「部下育成」の役割について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「部下育成」を管理者の役割とした理論的根拠、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、学習意欲の研究、「部下育成」の実践ヒント(一覧表)。

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第4章 問題解決

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「問題解決」について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「問題解決」を管理者の役割とした理論的根拠、「問題」とは、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、「問題解決」の実践ヒント(一覧表)。

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第5章 報酬

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「報酬」について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「報酬」を管理者の役割とした理論的根拠、従業員・部下の欲求の確認、業務目標と報酬の結びつけ、従業員・部下への支援、目標達成と報酬の獲得、「欲求充足の報酬化」を多様化する、「報酬」の実践ヒント(一覧表)。

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第6章 コミュニケーション

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「コミュニケーション」について理論と実践ヒントの両面から説明します。内容は以下のとおりです。「コミュニケーション」を管理者の役割とした理論的根拠、経営幹部のための実践ヒント、管理者のための実践ヒント、「コミュニケーション」の実践ヒント(一覧表)。

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引用・参考資料/更新記録

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・釼地邦秀(2006) 『組織活性化と経営管理者の役割』 白桃書房。
・その他。

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